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新進気鋭の生産者に学ぶ!チャンスをつくる5つのポイント

カテゴリ:密着!ライブコマース 更新日:2022-07-28

チャンスをつくる・生み出すためには、どのような視点を持ち、どう行動していくべきか。人が描くストーリーのなかには、そのヒントが隠されているはずです。

そこで今回「チャンスを科学する」をテーマにインタビューを実施。株式会社小林ふぁーむの成功事例をもとに、チャンスのつくり方・広げ方について考察してみました。チャンスをつくる5つのポイントをご紹介します。

【株式会社小林ふぁーむ】
今回、お話をうかがったのは京都府福知山市で農業を営む、株式会社小林ふぁーむ代表取締役の小林加奈子さんと、専務の小林伸輔さん。 
小林ふぁーむでは自社農園で育てた完熟トマトだけを使い、トマト100%の「とまとのじゅ〜す」を製造。インターネットを中心に販売しています。

2018年に法人化された比較的若い生産者でありながら、イベントなどで複数の受賞歴があり、数々のメディアでも取り上げられている、注目の生産者です。 
一方、成功の裏側にはさまざまな困難も。逆境にも負けず自分たちの手でチャンスをつくりだした経験を語ってくれました。

チャンスをつくる1:アンテナに引っ掛かったら思い切った1歩も大事

農業をする女性

本格的に農業を始める前は、おふたりともまったく農業に関係のない業界で働いており、大阪府で暮らしていたそうです。農業を始めるキッカケとなったのが、加奈子さんの祖母がもともと所有していた福知山市の畑や田んぼが、使用されていない状態になってしまったこと。せっかく田畑があるのなら……と、活用を考えたことからストーリーが始まります。

小林ふぁーむのおふたりは、それまでほとんど土さえいじったことさえなかったそう。3年ほどを準備期間にあて、本業の傍ら農業の勉強をしたり、大阪から福知山市に通って作物をつくったりと、経験を重ねていきました。

伸輔さん:農業はまったく知らない状態でしたが、知らなかったからこそ、この世界に飛び込むことができたのかもしれません。初めの頃は家庭菜園レベルだったと思いますが、福知山でつくった野菜を大阪で販売すると、お客さんが『美味しい!』って喜んでくれるんですよね。つくったものに対してお客さんの声が聞こえる、笑顔が見える。それが1番の励みになり、後押しにもなりました。

福知山の地の利や使える田畑があったこと、今ある環境を活かしてのチャレンジ。自分の近くにあるチャンスを見逃さず、キャッチアップしていったことが第一歩になりました。

ほとんど経験のないことへのチャレンジは、誰しも戸惑ってしまうもの。そこを思い切って方向転換したこと、軸を決めてやってみたいことを始めたこと、努力を惜しまなかったことが、後につながるチャンスを生み出したと言えるでしょう。小規模からのスタートでも、「人に喜んでもらう成功体験」を重ねていったこともポイントになっています。

チャンスをつくる2:自分らしいコンテンツを持って強みにする

「とまとのじゅ〜す」に使用するトマト

「とまとのじゅ〜す」に使用するトマトには、小林ふぁーむさんの強いこだわりがあります。農業に適した福知山市の環境に加え、独自で編み出した「かなこ農法」に則ってトマトを栽培・収穫をしているのだそう。かなこ農法の特徴は大きく次の4つです。

・土の持つ栄養やミネラルをトマトにたっぷり吸収させる。土が本来持つ力で育てること。
・化学肥料、農薬は不使用。追肥も行わない。
・木の下側に実ったトマトだけを収穫(土に近いトマトの方が養分やミネラルが多く、おいしいため)
・完熟の状態で収穫すること

伸輔さん:かなこ農法では今が食べ頃というタイミングでトマトを収穫しますが、完熟まで置いておくと、すぐにトマトが傷んでしまいます。形の悪いトマトや傷ついたトマトなど、本来なら捨ててしまうようなトマトを活用したいと誕生したのが「とまとのじゅ〜す」です。

「とまとのじゅ〜す」は、かなこ農法で育てたトマトだけを使い、食塩・砂糖・添加物・水などは不使用。トマトの味わいがダイレクトに伝わる、トマト100%のジュースです。180ml入りは1本864円(税込)、720ml入りは1本3,240円(税込)と決して安価とは言えませんが、トマト嫌いな人でもごくごく飲めると好評で、贈り物としても喜ばれています。

かなこ農法によって生まれた「とまとのじゅ〜す」

プロの視点からも高い評価を得ており、2019年2月に都内で行われた大型の商談会「東京インターナショナル 2019年ギフト・ショー春」では、ビバレッジ部門で大賞を受賞しています。

手間を惜しまないかなこ農法によって生まれた「とまとのじゅ〜す」は、オリジナル性の高い唯一無二の存在。ストーリー性もある商品で、小林ふぁーむの顔とも言える「強いコンテンツ」と言えるでしょう。強いコンテンツはインパクトもあり、人を惹きつけ、チャンスを生み出すツールになります。

モノやサービスだけでなく、自分自身のスキルやビジョンなどもコンテンツになります。自分の持っている武器は何か、それをどう活かしていくかを考えることが、チャンスをつくるキッカケとなるでしょう。

チャンスをつくる3:自分だけ得することを考えない

トマトづくりだけでなく、ジュースへの加工にも小林ふぁーむのこだわりが感じられます。

伸輔さん:私たちの育てるトマトのなかで、普通のトマトとして出荷できるのは1割程度。約9割をジュースに加工しています。

ジュースの加工場として選んだのが社会福祉法人で、福祉関係の子どもたちにジュースづくりをしてもらっています。私たちがトマトを持ち込むことで労働が生まれ、賃金に変わり、加工場からも喜ばれる。農業と福祉の「農福連携で、とまとのじゅ〜すをつくっています。

私たちはビジネスとしてだけではなく、たくさんの笑顔に出会いたいという想いから、農業にたどり着きました。愛や喜びといったことに、少しでも寄り添える生産者でいられたらいいですね。

2019年2月、とまとのじゅ〜すのビジネスモデルは、女性起業家のビジネスモデルを募集する「京都女性起業家賞(アントレプレナー賞)」で、近畿経済産業局長賞を受賞。トマト栽培におけるかなこ農法をはじめ、商品開発やブランディング、販売まで手掛ける「トマトのトータルカンパニー」を目指すビジネスモデルが高く評価されています。

「農福連携」によって地域の人との新たな絆が生まれる。人においしいと言ってもらえる、喜んでもらえる商品を手がけられることは、加工に携わる方々の誇りや喜びにもつながるはずです。自分たちのメリットだけを追求せず、誰かのため地域のためとの想いが、商品自体の価値を高め、周囲からの信用さえも勝ち取ることにつながったのではないでしょうか。

チャンスをつくる4:逆境はむしろチャンス!今できることに、ひたむきに

2019年に2つの賞を受賞し順風満帆に感じられるかもしれませんが、実はその前年の2018年、小林ふぁーむは大規模な水害に遭っています。収穫直前まで育っていたトマトは水没し、ほぼ全滅。2018年はジュースの販売開始を目指していたタイミングでしたが、ゼロどころかマイナスからのスタートという状態になってしまいます。

加奈子さん:私たちはプラス思考なので、水害にあってしまったものは仕方ないと受け入れ、これからどう対策してやっていくかを次の日から考え始めました。

とにかく『今あるもので、自分たちができる限りのことをやろう』と、水害の直前にほんの少し収穫してあったトマトで、とまとのじゅ〜すをつくってみたんです。それを2019年ギフト・ショー春に出品したところ大賞に選ばれました。

京都女性起業家賞へのチャレンジも、水害によってトマトの収穫ができなくなり、時間ができてしまったタイミングでのこと。そのときに知人からチャレンジしてみないかと紹介されたのが、京都女性起業家賞だったそうです。

加奈子さん:『いただいたチャンスはすべて活用する』『積極的にチャレンジする』という考えを私たちは大切にしています。京都女性企業家賞の話を聞いたとき、これはチャンスだと思い、その場ですぐにエントリーしました。

このチャレンジを通して、審査員の方や専門家の方から客観的な意見や指摘をいただけたこともプラスになっています。指摘を素直に受け止め、解決するために考える。ブラッシュアップを重ねたことが、今も生きています。

落ち込みたくなるような逆境にもめげず、一度リセットして仕切り直す。逆境の時こそ、今あるものや使える時間を活用し、今できる最善策を考える。もちろん簡単なことではありませんが、そのポジティブな考え方と行動力が実際に新たなチャンスをつくり出していることがわかります。

チャンスをつくる5:積極的な発信・行動が人を引きつける

小林ふぁーむでは人とのつながりを重要視し、つながりをつくり出すため、積極的に活動をされているそうです。

加奈子さん:自ら発信すること、人が集まるところに行くことは大切にしています。とくに私たちと同じような新人生産者の方とは積極的につながれるよう、何かしらの会合があれば参加するようにしていますね。

ほかにも、女性農林漁業者のコミュニティを立ち上げたり、コミュニティFMで月に一度、若手農業者や女性を応援する番組を持たせていただいたり、多方向でのつながりをつくっています。

身近なコミュニティをつくり、楽しみながらお互いを高めあう。発信・行動を続けていく。手当たり次第につながっていけばいい……というわけではありませんが、有意義なつながりが広がれば、その分チャンスも広がります。困ったときに互いに助け合える存在にもなるでしょう。

また、2021年2月にはライブコマースアプリ「CHANCE!」を活用し、初めてのライブ配信を行なっています。もともと、SNSではそろそろ限界があるのではないかと考えていたそうで、ライブコマースといった新しい取り組みには興味があったのだそう。同じタイミングで地元の信用金庫からライブ配信の提案を受け、チャレンジすることになりました。

CHANCE!はただの物販・ライブコマースではなく、クラウドプロジェクトを立ち上げ、配信者・視聴者が共にプロジェクトの成功を目指すのが特徴です。

小林ふぁーむでも「とまとのじゅ〜す」を紹介・販売するクラウドプロジェクトを立ち上げ。機材の準備やシナリオづくりなど、本業で忙しい傍らライブ配信の準備を進めて当日を迎えました。

当日は視聴者からのコメントも多く寄せられ、やり取りを楽しむ様子もあり、ライブ自体がかなり盛り上がった印象。売上に関しても予想以上だったそうです。さらに、ライブ配信によって新たなつながりも生まれています。

伸輔さん:「CHANCE! 」でのライブ配信を通していろんな人と出会えて、期待以上の販売もできました。なにより、ライブでつながったお客さんと後日お会いして、別の商談まで発展できたことも良かったです。まさしく『チャンスが広がった!』という感じですね。

加奈子さん:今後もライブ配信はやっていきたいですね。他の農業仲間と一緒にライブに出演するのも面白いかなと思っています。1人あたりの持ち時間を決めて、それぞれのメンバーの現場から中継、畑などのリアルな状況を見てもらう。ライブを視聴しているお客さんから注文が入って、その日のうちに発送して、その日の夜や翌日にはもう届いて……といったような使い方ができたらいいですね。

とくに女性は直接畑に出てお世話をするだけでなく、消費者の目線からもお話ができますし、ライブコマースにはうってつけ存在です。観ている人も楽しめるんじゃないかなと思います。

まとめ

5つのポイントを見てきましたが、おふたりの努力や工夫、考え方がチャンスをつくってきたことがわかります。何かを始めるにも継続していくにも、チャンスを生み出すことで可能性は広がります。自分が今、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

株式会社小林ふぁーむのHPはこちら

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