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シリコンバレー発ライブコマースFireworkがつくる未来とは〜消費者と企業のつながりを変えていく〜

カテゴリ:大手企業に学ぶビジネス 更新日:2023-01-13

ライブコマースをグローバルで見ると、中国が先行して大きく発展しました。一方、日本や欧米では文化の違いなどからライブコマースは根付かないのではないか、という意見もあります。日本における広義のライブコマースは、物販のコマース機能よりも投げ銭(ギフティング)型のアプリが先行して、ビジネスでも成功しています。

そんな中、シリコンバレー発のライブコマースプラットホーム「Firework(Loop Now Technologies, Inc)」が欧米・日本でもビジネスを急拡大しています。すでにグローバルで1000社を超える導入実績をもち、日本では無印良品や花王など、ファッション・美容系の企業を中心に採用が進んでいるようです。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2などから日本円にして累計300億円以上も資金調達を行うなど、スケールも桁違いのFirework。そのFireworkの日本のカントリーマネージャーである瀧澤優作さんにウェビナビ編集長である新井隆司が取材させていただきましたので、その様子をお伝えしたいと思います。

これからの消費者と企業のあり方はこう変わる。「フィジタル」とは

(新井)

本日はウェビナビの取材の機会をいただきありがとうございます。まずFireworkの世界観について教えていただけますでしょうか?

(瀧澤さん)

会社として「Reinvent the Internet」(「インターネットを再発明する」)という表現をしています。どういうように変えるのかというと、「企業と消費者のつながりを変えていく」という部分で新しい未来を作っていくんだよ、というお話をしています。

インターネットがなかった頃は、企業と消費者のつながりはオフラインで完結し、双方向かつ人間と人間が直接関わるという”体験”をしていました。しかし、”インフラ”という面ではフィジカル、つまり、特定の場所にきてもらうという場所としての制約がありました。

そして、この20年あまりでデジタル化が進んだ結果、コミュニケーションのあり方がどうなったかというと、一方向のものが多くなってしまいました。書く人や作り手の作ったものを何万人、何十万人に見てもらおう、というやり方になってしまい、”体験”としては、人間と人間のコミュニケーション(ヒューマンインタラクション)というより、ウェブサイトのなかで情報取得する、ということが多くなりました。

ただ、”インフラ”という面では、いつでもどこでも、パソコンでもスマホからでもなんでも情報が取れるという点で、色々な制約から解放されて大変便利になった20年だと思います。

これから先の未来はどうなるかというと、スマホからであっても、人と人でつながり話しているという、”双方向”かつ”人と人”のコミュニケーションが実現できている時代になるだろうと考えています。

これが「フィジカル」(身体的なもの)でも「デジタル」でもない「フィジタル」の時代となると予想しています。フィジカルの良いところ、デジタルの良いところ、それがかけ合わさった未来が絶対に作れると思っています。

(新井)

具体的にはどのようなイメージでしょうか。

(瀧澤さん)

「Firework」がやろうとしている動画やライブコマースという世界で、スマホでも、駅の電子看板(サイネージ)でも全ての部分でデバイスとの接点がありつつも、人と人とでコミュニケーションできる双方向(インタラクティブ)のインフラを作ろう、というのが考え方です。

これまでも(ネット上で)どんな「コンテンツ」にもつながるようになっていますが、わかりやすくいうと、ネット上では「人がいなかった」のだと思います。つまり双方向型ではなかったのです。今後は、行きたいところに触れられて、直接コミュニケーションできるようになると思っています。

(新井)

そういう意味では「ライブコマースの会社」にとどまらずもっと大きなものを目指されているのですね。

(瀧澤さん)

その通りです。ライブコマースだけの会社ではないと思っています。もちろんライブコマースも注目され評価はいただいており、それはありがたいことですが、それだけではなく、動画や、AR,VRの領域などでもビジョンである「Reinvent the Internet」という文脈でしっかりと伸ばしていけるようにと考えています。

もちろんビジョンだけではなく、実利のところもお客様にはしっかり感じていただきたいので、「Firework」で実際どういう効果が実現できるのかを日々お客様とお話しています。

グローバルなプロダクトである「Firework」は日本のマーケットにどう適応するのか

(新井)

日本のマーケットは、ある意味特殊なマーケットという感覚はお持ちでしょうか。ライブコマースが普及しにくいのではないかという意見もあります。

(瀧澤さん)

私は逆に、日本のお客様はライブコマースに親和性の高い方が多い、ということが言えると思っています。これはインスタライブや、投げ銭アプリで、スマホ上でコミュニケーションを取ることに慣れていて、その点はアメリカよりもかなり進んでいると考えています。

※スマホ上でコミュニケーションを取るとは、例えば動画の場面のように、ライブ配信をしている最中、配信者の呼びかけにリスナーがコメントで答えたり、リスナーのコメントに配信者が反応して答えたりなど相互でコミュニケーションをとることを指します。

だからこそ日本のお客様からのフィードバックはグローバルでも非常に重要です。

日本でいただいたフィードバックをしっかりアメリカの開発チームに落とし込み、それをどうお客様に還元できるか、ということを日々やっています。本社であるアメリカのプロダクトチームもどんどん日本に来て、日本のお客様のライブ配信の現場やオフィスにお伺いして、日々改善しています。

(新井)

「Firework」はグローバルな会社ですが、中国での先行事例がある中で欧米や日本でもチャンスがあると考えられたのはなぜでしょうか。

(瀧澤さん)

実は、創業者二人がそれぞれ香港と中国の出身で、加えてCTOは、中国のタオバオのTモールの創業メンバーであり、1000人以上のエンジニアのヘッドでした。彼の中国の経験の中で、先行した中国と欧米・日本とのギャップが確実に埋まるだろう、と確信がありました。だからこそ、中国以外のマーケットでアメリカを中心にヨーロッパ、日本にも展開しています。

(ウェビナビ編集部・漆谷)

中国と日本の違いについては、どう見ていますか。

(瀧澤さん)

中国は、ほとんどの人が巨大SNSプラットホームに集まって全ての行動をしている状況であるといえます。欧米や日本では、SNSは、情報を見る場所という認識がされていて、情報を収集して、分析する場所になっています。SNSで「購入」という行動はなされていないのが現状で、購入アクションはSNS上ではなく、ECサイトで行うという状況です。だからこそ、「Firework」の欧米・日本向けの仕組みは、オープンウェブとして、自社のウェブサイト上で使ってもらう、というのが戦略になっています。

(新井)

お客様のウェブサイトに埋め込めるような仕組みになっているのですね。オープンな仕組みにされた他の要因はありますか。

(瀧澤さん)

皆さんがECで困っておられることの一つは「利益率」だと思います。巨大プラットホームやSNSではなく、自社サイトでメディアから購入までを完結させることで利益率を改善させることができます。NIKEがAmazonから撤退したのも、こうした文脈です。

自社のメディアを育てることで、プラットホームに依存せずにデータが取れるし、そのデータをもとに色々な試行錯誤ができます。また、セキュリティの面でもサードパーティクッキーの話もあります。こうした背景も自社メディアの方向にいくと考える要因です。

今後のライブコマースのかたち

(新井)

コロナが落ち着いたらライブコマースの動きが落ち着くのではないかという人もいます。

(瀧澤さん)

コロナがライブコマースの起爆剤になったのは間違いないと思います。ただ、コロナがおさまってゼロには絶対にならず、この動きは普遍的なものと見ています。そして、これからテクノロジーがもっともっと進化していくと思います。

(新井)

今後ライブコマースはどのような形になると予想されていますか。

(瀧澤さん)

今のライブコマースの段階は、「ライブ配信をしているだけ」という状態に近いと思います。ライブ配信にチャットや購入のリンクがあるだけ、というものが多いですが、これからは、リアルな体験により近づけるようになるのではないかと思います。

マルチホストという形で、例えば4人が雑談している様子を配信しているケースもあるでしょうし、あるいは、1対nで複数人が話している状態から、ある段階になると1対1の商談場面にきりかわる、というようなケースも出てくると思います。

もしかすると、実際にものを触っている状態で双方向でやり取りができる取り組みもあるかもしれないですし、キットを事前に送っておいて、そのキットを触りながらライブ配信を楽しんだりとか、さまざまな活用方法があると思います。見る側のチャネルも、スマホだけではなく街中の電子看板とかさまざまな場所から双方向でリアルタイムでできることが増えていくのではないかと思っています。

また、「Firework」からもこういうように使われていますよ、という事例をどんどん発信していきたいと考えています。「Firework」の強みの一つはグローバルであることなので、社内でも日々海外の事例を共有する仕組みを作っています。その事例をお客様とも共有して、企業とカスタマーをつなげていくことをやっていきたいと思います。

成功するライブコマースとは!?「ショッパー」から「カスタマー」

(新井)

ズバリ、お客様がライブコマースで成功する秘訣は何でしょうか。

(瀧澤さん)

まず、「成功の定義」が大事です。売ることが成功なのか、お客様との接点を増やすことが成功なのか、お客様のエンゲージメントが深まることが成功なのか、ここがブレると施策がわかりづらくなります。何を「成功」とするのか、をしっかり議論していきます。

「Firework」のお客様には、考え方の部分、つまりビジネスゴールを明確にした上でそこから逆算してどういうように「Firework」が役に立てるのか?ということを「パートナーサクセス」というチームがやっていきます。一般的にカスタマーサポートという言われ方をしますが、「Firework」ではサポートではなくサクセスにこだわるのだ、ということで「パートナーサクセス」という名前になっています。

(新井)

パートナーサクセスの役割はどういうものでしょうか。

(瀧澤さん)

ブランドの販促活動では、新規顧客を獲得することが大変難しいと思います。英語でいうと、「ショッパー」から「カスタマー」になっていただくことが重要です。「ショッパー」は、1回2回商品を買ってくれた人のことで、「カスタマー」はしっかりとブランドを認知して買ってくれる人のことで、この2つは大きな違いがあります。

「このブランドいいかも」と思ってくれたお客様にしっかり「カスタマー」になってもらうことが大切です。もう一つは、企業が消費者とどれくらいコミュニケーションをとっているか、という観点が重要であることをお伝えしたいです。店舗、SNS、あるいは街の中のサイネージでもどれだけカスタマーとの接点の数と、接点の深さを持っているか、ということが重要です。この点でも「Firework」の機能を使ってもらえることが強みです。

「Firework」の考える成功・チャンスとは

(新井)

日本市場はどうやって開拓されたのでしょうか。元々顧客基盤があったのでしょうか。

(瀧澤さん)

全くゼロからのスタートでした。ただ、言えることはお客様とのコミュニケーション量を重視し展開できていると感じています。デジタルソリューションを提供していますが、やはり現場でお客様とお話することが非常に大事で、どんどん客先や現場に行かせてもらって様々なお話しさせてもらっています。この点は誇りに思っていることです。

(新井)

お客様目線を徹底されているのですね。

(瀧澤さん)

その先のお客様、つまり消費者まで目を向けていきたいと思っています。「Firework」はライブコマースだけのポイントツールではなくて、多機能性がポイントです。ツールを入れていただいても、お客様の本当の成功に役立っていなかったら意味がありません。システム面でも、バグがあればすぐに潰していくという体制になっています。グローバルで350人程度の体制となって、カナダ・アメリカ・アジアと24時間体制で開発しています。また、運用面でもグローバルな知識や情報が溜まってきているので、これらをお客様にも還元していきたいと思っています。また日本のお客様のグローバル化案件も増えています。グローバル対応は他にはない強みであると自負しています。

(新井)

瀧澤さんがこれまでの活動の中で「チャンスが生まれた」体験を教えてください。

(瀧澤さん)

「Firework」は元々縦型ショート動画プラットホームとして設立され、その後新規機能としてライブコマース機能が加わった経緯があります。実はライブコマース機能がリリースされてからはそんなに日が経っていません。にもかかわらず、あっという間に導入企業が1000社を超え、ソフトバンクのビジョンファンドにも投資いただき、この領域ではグローバルで一番大きい評価額になっていると思います。

一見華々しいようですが、日本で最初に導入いただいた会社様が初めてライブ配信をされた時は、社員の8割が現場に入って応援させていただきました。ライブ配信が終わって、「はい、カット!」となった時に、「お疲れ様でした!」という一体感があって、しかもライブの反応がすごかったのです。

この時は「チャンスが生まれた!」という感動がありました。その後「Firework」のお客様に集まっていただいたフェスをやった時も大成功で、「もっと一緒にやっていきましょう」というフィードバックをもらった時も大変素晴らしかったです。これらのことで顧客が紹介で増えてきた経緯があります。

(新井)

「チャンスを作り出す」秘訣はズバリなんでしょうか。

(瀧澤さん)

まずは、目の前のお客様の成功を意識することを徹底してやっています。やるべきことをしっかりやっていくということです。つまり「チャンスというのは課題解決(の連続)である」ということですかね。課題解決を丹念に続けていくことがチャンスにつながると思います。

(新井)

最後にウェビナビの読者にお伝えしたいことがあればお願いします。

(瀧澤さん)

「Firework」は消費者と企業の接点を深める時に最適なソリューションだと信じているので、課題ベースでなんでもお問い合わせください。動画分野でもライブ分野でも課題についてお話できる機会をいただければと思います。

編集後記 : ビジョンと課題解決、技術力と現場力のバランス

瀧澤さんは、「Firework(Loop Now Technology Inc.)」の創業間もない頃から、創業者と苦楽を共にし、今も本社のあるシリコンバレーと日本を忙しく行き来されています。この取材もアメリカに帰られる(「行く」のではなく拠点は今もアメリカなのでアメリカに「帰る」という感覚だそうです)直前のお忙しい中、取材の時間をいただきました。

グローバルプロダクトと聞くと大上段から「これを導入すればうまくいく」的なイメージを持たれるかもしれません。私新井も大変失礼ながら、そういう先入観でお伺いしてしまいましたが、瀧澤さんのお話から、「将来のビジョンと、目の前の課題解決」、そして「先端かつ大規模な開発力と、目の前のお客様の現場訪問による対応」というマクロ視点とミクロ視点が、自然な形で統一感を持ってご説明されているお姿に感銘を受けました。

そして何より楽しく取材をさせていただき、お疲れの様子も見せずに対応いただきました。ライブであろうが、リアルであろうが、2つは別ものではなく一緒なのだな、と納得して帰ってきました。瀧澤さんからいただいた「チャンスというのは、課題解決の連続にある」という名言を、コラムを読んでいただいた皆様にもシェアできることがとても嬉しく思います。

Fireworkをもっと知りたい方はこちら:Firework Japan


新井隆司

ウェビナビ編集長(シナジーゲート株式会社代表取締役・株式会社ネクプロ 取締役ファウンダー)。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。アクセンチュアでのコンサルタントやその後資産運用会社で、年間300人以上の経営者とのインタビューを行い、ビジネス・事業分析に定評がある。
その後自身でも株式会社ネクプロでオンラインセミナーのプラットホーム事業を立ち上げ、起業家・ベンチャー企業運営の実体験も持つ。その経験を生かして、ライブコマースに特化したメディア「ウェビナビ」を立ち上げ、ライブ配信を活用したビジネスについて発信している。


 

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