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今回の編集長取材は、ライブコマースや動画の世界で、「Tig(ティグ)」などいつも新しいアイデアを形にされているパロニム株式会社から八武崎后果さんが取材にご協力してくださいました。
Tig(ティグ)といえば「動画に触る」ことで欲しい情報にアクセスできるインタラクティブ動画技術のインパクトがとても大きいです。最近では「Tig LIVE」を活用して、見ている画面を指で触れながら楽しめるライブコマースを目にする機会が増えています。ライブコマースにおけるTigのアプローチに迫ります!
目次
「動画に触る」Tig(ティグ)のインタラクティブ動画とは、動画を見ている視聴者が、視聴中にもっと詳しく知りたい、見たいと思った瞬間に、画面上から対象物をタップ(またはクリック)するだけで、 必要な情報をストックできたり、ストックした情報から詳細ページへと遷移できる次世代型インタラクティブ動画技術のこと。視聴者自ら「検索」をするというステップをなくすことで、視聴者それぞれの知りたい情報へ迷うことなくたどり着くことができるものです。
ーーーーTigのユニークなアプローチにいつも感銘を受けているのですが、事業での取組みと着想の経緯について教えてください。
主に「インタラクティブ動画」と「ライブコマース」の二軸で事業を展開しています。最近ライブコマースに注目が集まってきているので、インタラクティブ動画を活用したライブコマース事業を強化しています。実施したライブコマース配信は、アーカイブ動画として蓄積できるためコンテンツ資産となります。また、アーカイブ化と同時にこの動画はECサイトと連携できるため販売促進の施策としても活躍します。
「インタラクティブ動画」の着想の経緯からお話しさせていただきます。
代表の小林(編集部注:小林道生代表取締役)は「テレビを見ちゃダメ」というような家庭に育ち、少年期の頃から「情報に飢えていた」そうです。この経験から「情報をみんなに平等に届けたい」という思いとなり、「見ている動画に触れたりするだけで、欲しい情報を自分で探しに行くことなく、適切にたどり着けると面白い」という着想で生まれたのが「Tig Video」というインタラクティブ動画のサービスです。
ーーー「インタラクティブ動画」はどうやって生まれたのでしょうか。
インタラクティブ動画は「動画に触る」ことが出来るというアイデアなのですが、開発当初は一般的に「インタラクティブ動画」という概念がなく、もちろん「動画に触る」というUIやUXも世の中にない中、どうすれば視聴者に「動画に触ってもらえるのか?」を考えるのが大変でした。具体的には、スクリーンの画面のどこかをタップしたときに何かが起きる、例えば「波紋ができる」などの仕掛けを入れて、「何かしたら何か反応がある」という面白さを表現するところに注力しました。
幸い、技術は自社でやってきましたので、アイデアを形にする時に連携がしやすかったこともあり、UIや UXにこだわった形で「動画に触る」ということを実現してきました。
ーーー「動画に触る」インタラクティブ動画が「ライブコマース」に至った経緯も教えてください。
インタラクティブ動画の次にライブコマースに取り組んだ経緯は「『動画のステマ感』(笑)をなくしたい」、「クライアントとユーザーが双方向でやり取りできる仕組みを作りたい」という着想です。ユーザーにステマのような広告の雰囲気を感じさせることなく、ユーザーが知りたい情報について対話が出来るようになればさらに商品の良さを伝えられると感じました。これが「Tig LIVE」を活用したライブコマースの原点になります。
「Tig LIVE」は、ライブ配信中に商品のバーコードを読み取ると、読み取った商品の情報を視聴者の画面に表示させることができるという仕組みになっています。店舗にある商品を事前にデータとしてシステムに登録しておくことで、視聴者の関心に応じていつでも自由に商品を表示させることができ、視聴者が欲しい情報をすぐに提供することができます。
視聴者はライブ配信中に興味がある商品の情報を詳しく知ることができコマーサー(出演者)との対話もできるので「店舗接客」を受けているような感覚に近くなります。これによって「ステマ感」を払拭できているのではないかと考えています。
ーーーライブコマースはどうしてもテレビショッピング的になりがちですよね。
ライブコマースで商品を紹介するときは、商品を絞り込んで紹介する、というパターンが多いと思います。そうすると、テレビショッピングのように、あらかじめ決められた商品の話に限定されたライブコマースとなります。「Tig LIVE」を活用したライブコマースは、配信者が実際の店舗の中を回遊しながらライブ配信をします。お店の雰囲気を楽しみつつ、視聴者がライブ配信中に気になったものをコメントすると、コメントを見た配信者が「ピッ」と商品のバーコードを読むことですぐに情報を表示できます。表示された情報を見ながら「色は・・・」とか「サイズ感は・・・」と情報を確認できたり、配信者に質問したりすることもできます。
2020年にABCマートさんのライブコマースでTig LIVEを導入させていただいたのですが、ライブ配信中にバーコードを読み取り、リアルタイムで商品が出る、という仕組みはユニークで、大変面白がっていただけたと思います。現在は、アパレルのMARK STYLERさんなど多くの会社さんに導入いただいています。
ーーーまさに双方向の店舗体験ができるのですね。
ライブ配信中に視聴者が気になった商品や欲しい商品を紹介できるので、ライブコマースではありますが、よりリアルな接客ができるのが特色です。店舗体験がウェブでできる仕組みになっています。リアルな店舗体験の良さは「あれも見たい、これも見たい」と店舗内の気になる商品を手に取れることと、スタッフとの会話を楽しめることです。
また、配信を通して店舗のコンセプトやこだわりを伝えられることでブランドイメージを感じてもらうことができます。これがオンラインで出来るようになったのが、お客様のワクワク体験につながっていると思っています。
ーーー店舗ライブコマースだと、アパレルはわかりやすい事例ですが、アパレル以外でも親和性の高い領域はありますか?
家具、飲料、ペットショップの相性は特に良いです。「Tig LIVE」を活用したペットショップのライブコマース事例では、「ペットとのより良い生活のための情報提供」という目的で実施されているものがあります。
「ペットオーナーのお悩み解決」というテーマでライブコマースをされていて、視聴者のお悩みを解決するおやつであったり、トイレトレーニングをするのに必要なシートだったり、ライブコマースの中で視聴者のコメントに合わせて商品をご紹介されています。視聴者の意見や悩みを拾って視聴者の声に寄り添いながら商品を紹介しているので、「売られている」印象という感じはしないですね。
ーーーライブコマースはどのように企業に受け入れられている印象ですか?
2020年のコロナウィルスの流行以降、消費者が、いい意味で「リアル」と「オンライン」を選べるようになり、うまく使い分けていらっしゃる印象があります。
消費者の行動に対応して、企業や店舗としても「リアル」と「オンライン」の両軸で取り組まれている企業が増えています。今は両軸を取り入れることが当たり前になっている、という印象です。
ーーーSNSとライブコマースをどう使い分けたら良いか、という質問もあります。
SNSとライブコマースは並行して利用いただいているケースが多いです。SNSの場合は、情報を見た方がその後の購入に至るまでの経緯がデータとして詳細に測れません。一方で、TigではCMS(管理画面)で様々な指標データが取得できますので、SNSを併用しながらTigで取得したデータも活用し成功パターンの形を作っておられるようです。
ライブコマースのイベントのみで「販売の結果」を追求しているとどうしても難しい部分があり、悩まれている企業様もいるのが事実です。一方で「ライブコマースを実施するのが当たり前」になっていることも理解されてきています。「SNSとライブコマースのどちらが効果があるか」という論点ではないということですね。併用しながら「どうやってロイヤルユーザを獲得していくのか」というポイントが重要で、成功されている企業では概ねそのような考えで取り組んでおられるようです。
ーーーSNSとライブコマースの併用とは具体的にはどういう形で使うのが良いのでしょうか。
無料のSNS系ツールで「ライブコマースにいくと直接購入できますよ、対話できますよ」という告知をして、ライブコマースに誘導する動線が多いです。情報の拡散こそが肝なのでSNSでの告知はもはや必須で、自社で抱えている会員さん向けの告知だけではなく、積極的にSNSでも告知していただいています。
あるアパレル企業のご担当者もSNSで発信すると視聴者の伸びの違いが実感できる、とおっしゃっていました。このアパレル企業はSNSで告知することで、ライブコマースの視聴者が200人くらいだったのが800人くらいになりました。SNSもライブコマースも細かく取り組んでいかれるところは結果が出ていますね。また戦略として、お客様とどれだけ深くつながっていけるのか、という部分を細かく設計しながら進めることが重要だと考えています。
ーーーリアル店舗とオンライン、という点も同じでしょうか。
そうですね。120%活用するためには、どちらかに比重を置くのではなくリアルとオンラインの両輪で回していくのが良いです。両輪をしっかり回されているところは数字も出しておられますね。
弊社のカスタマーサクセスのチームが企業のご担当者と会話しながら、より一緒に並走して成功への道筋を作る、ということをやっています。ぜひカスタマーサクセスに相談していただければと思っています。
ーーー成功する会社の傾向やポイントはありますか。
ズバリ、お悩みを率直に打ち明けていただける企業、私たちの提案に対して柔軟な対応を行なっていただける企業です。私たちは「企業がどんな未来を描いているのか」というのを重要視していて「ものを売った先にどんなことを描くのか」を必ず聞くようにしています。
販売自体がゴールではなく、その先に描く未来に向けてサポートしたいと思っているからです。まず、そのお話ができることが重要だと思っています。
ーーー今後のパロニムの方向性について教えてください。パロニムさんに注目している方から見るとARとかメタバースの領域でやっていかれるようなイメージもあります。
自分の言葉で言うと「気づけばそこにTigがあるような生活」があったらいいと思います。動画を見てたら実はそれがTigだった、Tigということを認識してなくてもそれがTigだったというような世の中になれば良いなと思っています。
パロニムはTigを通じてどんな企業・どんなリテラシーの方でも簡単に「インタラクティブ動画」や「BtoC、BtoB向けのライブコマース」ができること、またこのことを通じて、インタラクティブ動画やライブ配信を「標準」に転換させていく、という視点で活動しています。
おっしゃるように今やっていることがARに近い概念かもしれないとは思います。また、ARからメタバース、というような文脈でのお話やご依頼もあります。ただパロニムとしてはARやメタバースという技術に特化したいわけではなく、一つの技術であるという感覚です。技術が色々と出てきても「情報を伝える」ということは変わらない、ということで芯を通して活動したいと思います。
ーーー動画を通じてプラットフォームを目指されるイメージでしょうか。海外展開もありますか。
プラットフォームではなく「メディア化」したいと考えています。Tigを使ってあんなことができる、こんなことができるという使い方を発信していくことがメディア化ということではないかと思っています。インフラという意味に近いのかもしれないです。
海外と日本は流通なども含めて文化がかなり違うので、そのまま通用するわけではないとは思いますが、実際は海外の展示会などから声が掛かっています。先日はフランスの展示会の出展があり、今度はタイでも出展予定です。今後はグローバル展開を考えて準備しているところです。
ーーー突然話が変わりますが、八武崎さんはどうしてパロニムに入社されたのですか(笑)
もともとアパレル販売の仕事をしていた時、販売員が指示されたことのみを行うロボットのように感じており、店舗から自分で発信していると「本部がやってるからいらない」などと言われ、「販売員の未来はないのではないか」と思っていた時期がありました。そんな中、あるアパレルの会社さんが「販売員さんは宝です」と言っておられて大変感動し、だからこそ、販売員の未来につながる何かをやりたい、と思っていました。
パロニムに出会って、自分がアパレル業界にいなくても販売員の力になれると気付き、販売員の新しい未来を作れるサービスに可能性を感じたのがきっかけです。日々お客様のお声を聞いている販売員さんはライブコマースに本当に向いていると思います。
ーーー八武崎さんの情熱がどこから来るのかなと思って、つい聞いてしまいましたが、お伺いしてよかったです。とても感動しました。
ーーー最後にTigのライブコマースやサービスを体感したい場合、どこを見たら良いか教えてください。
パロニムのHP「USECASE」に色々な事例が載っています。
詳しくはこちら:https://www.paronym.jp/usecase/
また、ライブコマースの番組表もありますので、ぜひご覧なっていただき、Tigの世界を体験いただけると嬉しいです。
番組表はこちら:https://paronym.jp/media/live_program/
めちゃめちゃ楽しそうにTigのお話をしていただき、大変取材が盛り上がりました。それだけ自社の思想やプロダクトに愛着を持っておられる、ということがよく伝わってきた取材です。ARのような技術オリエンテッドな会社なのかと思いきや、技術だけではない「情報の広がり」やその楽しさをどう実現するのかといった哲学的とも言えるコンセプトを持った会社なのだと感じました。だからこそ可能性も無限で、パロニムさんからどんな情報が発出されるのか、これからも目が離せません。また、日本市場の特殊性から、なかなかグローバルで勝負するのは難しいとも言われている「動画」という領域で、世界で勝負できるサービスを作っていかれることでしょう。日本発でグローバルへの発信、ワクワクしかありませんね!
新井隆司
ウェビナビ編集長(シナジーゲート株式会社代表取締役・株式会社ネクプロ 取締役ファウンダー)。 日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。アクセンチュアでのコンサルタントやその後資産運用会社で、年間300人以上の経営者とのインタビューを行い、ビジネス・事業分析に定評がある。
その後自身でも株式会社ネクプロでオンラインセミナーのプラットホーム事業を立ち上げ、起業家・ベンチャー企業運営の実体験も持つ。その経験を生かして、ライブコマースに特化したメディア「ウェビナビ」を立ち上げ、ライブ配信を活用したビジネスについて発信している。
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