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今回の取材は、食に特化したライブコマースプラットホームのfoove(フーブ)を運営するNTT西日本グループのエヌ・ティ・ティ・スマートコネクト株式会社の吉田さん、相原さんと、foove のパートナーである株式会社備中農園の杉山さんにお話をうかがいました。
食に特化したライブコマースプラットホームのfoove(フーブ)を利用されている株式会社備中農園の杉山さんへお話を伺いました。
ーーーー生産されているモノや販売経路などについて教えてください。
杉山さん:
私たちは、岐阜県岐南町で儲かる農業を目指して、生産・販売を行っています。まちなか農業なので、大量生産型の農業は難しいと思い、付加価値をつけられる作物を選んで夏にとうもろこし、秋にマコモタケ、冬にカラフルカリフラワー、通期ではじゃがいもを育てています。
たとえば、私たちの育てるとうもろこしは、水分量が多くみずみずしい食感を楽しんでいただけて、生でも食べることができます。またカラフルカリフラワーは名前の通り、一般的な白だけではなく、紫、緑、オレンジのようにカラフルな見た目が特徴です。通期で生産・販売しているじゃがいもは糖度が非常に高いのが特徴となっています。販売については、直接、小売店さんに卸したり、モール系のECで販売したり、fooveを通じて販売したりしています。
ーーーーfooveでライブコマースをはじめたきっかけを教えてください。
杉山さん:
もともと、作っている野菜の味に自信はあったのですが、野菜の良さを伝えられる場所がなく、なにかないかと模索していました。店頭販売であれば、野菜ソムリエサミットで「最高金賞受賞」したことを訴求することで、一定の効果は得られたと思うのですが、どうしてもエリアを超えての影響には繋がりませんでした。
知名度を高めようと、Instagramを通じた投稿や、新聞広告なども行ってみたのですが、期待していた効果を得ることはできず、どうしたものかと考えている中で、ライブコマースであれば、店頭販売しているかのように、良さや美味しさ、生産における思いなどを伝えられるのではないかと思い、チャンレンジしてみました。
今回、ライブ配信プラットフォームとしてfooveを選んだ理由としては、視聴者の反応をリアルタイムで確認しやすいUIだったことや、画面上でハートなどを送ってもらえるなど、双方向のコミュニケーションを取りやすそうと思ったからです。 また、実際に配信する際には、ほぼボタンひとつで実施でき、販売したい商品の設定もやりやすかった点などが決め手でした。
相原さん:
そのように言っていただけて嬉しいです。ライブコマース自体は10年前からあるジャンルである中で、当社らしさをどのようにもたせるかを考えて事業化したのがfooveです。「当社らしさ」のあるサービスにしようとしたときに、思い当たったのが、NTT西日本グループとして一貫して、地域に根付いたサービスを提供していたことでした。
当社や当社グループらしさを振り返ると、「コンテンツ配信を通じて生産者ー販売者ー消費者をコネクトするサービス」が適していると考えて、事業化したので、視聴者(消費者)とコミュニケーションを取りやすいという理由をあげていただき、嬉しいです。
ーーーー配信する際に工夫された点や、内容を考える際にどのようなポイントを気にされましたか?
杉山さん:
考えて、やってみて、改善しての繰り返しでした。出演者については、良さや思いを伝えたいという目的にもあっていたので、店頭販売を行っている人にお願いしています。インパクトが重要かと思いコスプレをしてやってみたり、映像品質も重要かと思いGoProを検討してみたりなど配信内容や配信方法・体制について、トライアンドエラーを繰り返しました。
配信内容で思ったのが、コスプレは少し行き過ぎていたようなので、特徴的な自己紹介くらいのキャラ付のほうが良さそうでした。また、出演者のトークを中心にするよりも、周りの人に試食してもらって、その際の感想や、食べる際に生まれる音などがあったほうが、消費者からの反応が良かったです。配信機器については、使い勝手の良さから最終的にはスマートフォンに落ち着きました。
お話する内容についていうと、ガチガチに台本を固めるよりも、紹介した商品やポイント、大枠の流れだけ考えておき、あとは視ていただいている消費者の反応やコメントに対応していくのが現場に近い感じがして良い印象でした。また、食べ方や発送までにかかる時間などは、誰もが気にするポイントなので、繰り返し紹介することで、途中で参加してきた消費者の方にも情報を伝えられるように工夫しています。
自分の農園の話だけでない点でいうと、イベントなどで他のfooveパートナーである生産者が連続して配信する場合は、リレーのような気持ちで、次の配信者の方の説明を最後に入れてみたりして、横(生産者・配信者同士)の繋がりも考えてやってみています。
ライブ配信を視聴してもらうための活動としては、fooveの機能で次のライブ配信の概要を入力できるところがあるので、そちらに記載してみたり、公式SNSで通知をしてみたりしています。告知する際には、販売する商品の画像を中心にしつつ、消費者のニーズに合わせてパッケージングし、セット名を考えて入れてみたりしています。
吉田さん:
fooveとしては、ライブ配信におけるサポートもさせて頂いておりますが、多くの方にライブ配信を視聴いただくための取り組みも大きく4つ行っています。
1、公式Instagramを通じた情報発信
2、公式LINEを通じた情報発信
3、会員へのメール配信を通じた情報発信
4、ウェビナビさんを通じた情報発信
公式SNSを通じた情報発信は媒体の特性に合わせた、情報発信の時期や時間、クリエイティブを検討して実施しています。会員向けのメール配信については、大きなイベントの際には全体に配信し、それ以外にも、各消費者がお気に入り登録している配信者・生産者がライブ配信を行う際には、通知されるようにしています。また、御社の運営されているウェビナビを通じての情報発信か消費者・視聴者を募っています。
ーーーーはじめてのライブコマースということで、fooveからのサポートなどはあったのでしょうか?
杉山さん:
はい。本当に助かりました。
やった経験の少ないことだったので、不安でしたが、担当の方がこちらまで来てくださり、fooveの使い方やライブ配信のやり方などについて丁寧に教えていただけました。ライブ配信を開始してからも、サムネイルを作っていただけたり、実際にライブ配信に出演いただき、商品の試食をしてもらったりなど幅広い面で、手厚くサポートいただいています。
また、私たちに関係ありそうなfoove内の配信イベントがある際には積極的にお声がけいただけていることも助かっています。
相原さん:
備中農園さまだけでなく、ほとんどの方がはじめてライブコマースを実施されるので、どんな配信を行えばよいかわからないという声も多いです。これに対しては、当社としてのノウハウを提供し、一緒に配信の構成を作ったりもしています。
例えば、30~45分の配信であれば、あまり作り込まずに視聴者からのコメントに反応したり、食べ方や保存方法、商品到着の時期など一般的に多い質問については繰り返し発信したりするなどのポイントをお伝えしています。また、より具体的な配信内容や、配信体制についても過去の配信者の事例を交えながらご紹介するようにしています。
相原さん:
備中農園さんについて言えば、逆にお声がけいただくこともあり、当社としても新しい機会を頂いています。具体例でいえば、岐阜の生産者を集めた東京の販売会が開催される際にお声がけいただき、リアルで販売会を行いつつ、同時にfooveでのライブコマース配信を行わせていただきました。 当社としても新しい取り組みの機会をいただき、大変刺激になりました。
ーーーーありがとうございます。ライブコマースを実施してみての成果やこれからの展開についてもお聞かせください。
杉山さん:
新たな販路として、セット販売の商品が数件売れるようになっていますし、回を重ねるごとに視聴者数も増えて、認知度向上につながっていると感じています。また、知人や同業者からも話題にしていただけるようになりました。
具体的な成果などとは異なりますが、発見があった点としては、カメラを向けると意外とみんな話すんだなということです。自社商品について、熱い思いがあることを知れて、社内的にもよい影響を感じました。
今後の展開については、私たちだけでは実現できないですが、エリアや食材などの軸で小さくともライブイベントを実施していったりできたらなと思っています。
吉田さん:
長期的には、継続的にライブコマースを行うことの重要性も感じています。
シーズンに応じて、旬な状態のモノを継続してライブコマースを行うことで、ファンを増やせるようになると思いますし、例えば春で行ったライブコマースの反応がよければ、その消費者・視聴者は他のシーズンの配信も見て、購入してみようという気になっているように思います。
備中農園さんは定期的に配信いただいているので、長期的にその効果が表れてくるかなと感じています。
サービス全体としては、瞬間風速的に盛り上がるというよりは、「普段使い」できるようなサービスを目指しています。
成長する過程で、生産者の課題を消費者や生産者同士の繋がりを強化することを通じて、解決していけるように、もっと踏み込んだサービスを展開し、食のライブコマースではナンバーワンを目指します。
ーーーーこれからライブコマースを始めようと検討している方々にコメントをお願いします。
杉山さん:
新型コロナウィルスによって、消費者の方の前に立つ機会は、以前に比べるとまだまだ少ない状況だと思います。このような中でも、良い物を作る生産者さんは多い一方で、それらを伝えられる機会は多くありません。ライブコマースは、良さを伝えやすく、店頭販売に近い感覚で実施できます。
ライブコマースは、全国の消費者の方々とコミュニケーションができたり、信頼関係をきづけたりしやすいので、恥ずかしがらずにはじめてみてください。
吉田さん:
NTTがやるということで、「売上げありき」というよりは「地域活性」という意味で寄り添って貢献したいという想いで運営していますので、難しく考えずに問い合わせも含めて遠慮なく声をかけていただければと思います。
顔の見える食という意味で楽しんでいただきたいと考えています。
ライブコマースと農業はちょっと遠い存在と思われるかも知れませんが、ライブ配信を通じたコミュニケーションによって、消費者との距離が縮まったり、農業に関心を持ってもらいやすくなったりすると思います。
コツコツ継続的に配信いただくことで、消費者を当事者に変え、新しい関係性も作れると信じています。
―最後に、食に特化したライブコマースプラットホームであるfooveのサービス概要について教えてください。
相原さん:
エヌ・ティ・ティ・スマートコネクトは、もともとクラウドサービスやサーバ、コンテンツの配信を生業としています。ライブコマースについては、2020年頃から新規事業としてはじめており、2022年5月より本格的に事業化しています。新規事業として取り扱う段階から、ライブコマース自体は10年前からある中で、「なぜ当社が行うのか」という点は議論となっていました。
「当社らしさ」のあるサービスにしようとしたときに、思い当たったのが、NTT西日本グループとして一貫して、地域に根付いたサービスを提供していたことでした。具体的にはICT活用による地域課題の解決などです。
一次産業の課題を聞いていくと、後継者不在、高齢化、儲からない、若者の就業率の問題などたくさんの課題が挙げられました。流通を変えるということはできないですが、販路の一つとして私たちの仕組み・サービスを使っていただくことで課題解決のご支援ができればと思いました。
大きな話では、日本の食糧自給率を上げていくことに貢献する、という目標があります。
そのためには、作り手(生産者)を増やしていくということも一つであり、生産者に利益がもたらされるような仕組みとして、ライブコマースの活用に可能性を感じました。
当社の生業や今までお話したようなグループとしての立ち位置を考えた際のコンセプトとして「コンテンツ配信を通じて生産者ー販売者ー消費者をコネクトするサービス」が適していると考え、それらを軸に事業化を進めていきました。
ーーーーライブコマースを新たな販売経路として、バリューチェーン全体の最適化を目指すような狙いもあるのでしょうか?
相原さん:
fooveとしては、バリューチェーン全体というよりは川下、つまり消費者に近いところを担っていきたいと考えています。NTTグループ全体では川上、つまり生産そのものに近いところでセンサーを使った仕組みや、物流でICTをやっている部署もありますので、今後は連携し、NTTグルーブ全体としてバリューチェーン全体の最適化は担っていければと考えています。
ーーーーライブであることの意味はどういうように捉えられていますか?
吉田さん:
例えば、レストランで素材の生産地や食べ方について説明されてから食べると、どこか普段よりも美味しいと感じることもあると思います。このような発見や美味しさ、楽しさのような感覚をライブ動画なら、伝えられるのではないかと思っています。
録画された動画ではなく、「ライブ動画」である意味について考えると、双方向でのコミュニケーションができ、食でいえば、手間や距離を超えてマルシェのような感覚で、生産者と消費者が繋がれるイメージです。
実際にマルシェをやろうとすると、数日間会場の対応に専念して、さらに移動や準備にも時間がかかります。しかし、ライブコマースで実施できれば、状況によって移動は発生しますが、数十分から数時間の時間があれば、全国の消費者と繋がることが可能です。さらにテキストで消費者(視聴者)からご意見や感想を募ることができたり、購入いただいた方に生産者側から感謝を伝えることができたりします。
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