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企業が多様なステークホルダーと協力し、新しい価値を生み出す「共創」。急速な技術革新や市場のグローバル化により、企業は多角的な視点でビジネスを推進する必要性が高まっています。共創の基礎知識からそのメリット、課題や具体的な実践方法など、詳しく解説します。
英語で「co-creation(コ・クリエーション)」と表現する「共創(きょうそう)」。共創とは、簡単に言うと企業や団体があらゆるステークホルダーと協力し、共に新しい価値を生み出すことを指す言葉です。“創”という字が意味する通り、共創の目的は“創る”こと。異なる専門知識や視点を持つステークホルダーが組織や業界といった枠組みを越え、新商品の開発や既存サービスの改善、マーケティング、事業戦略などを創造する取り組みです。
ステークホルダーには関連企業やパートナー企業、株主、顧客、自治体、地域社会まで幅広く含まれますが、全ての参加者が対等な立場で、持続的な協力関係を構築します。
「VUCA(Volatility:変動性/Uncertainty:不確実性/Complexity:複雑性/Ambiguity:曖昧性)」という言葉が示すように、未来が見通しづらい今、企業の成長をサポートする方法の一つとして、共創が注目されています。
急速な技術革新や市場のグローバル化によって、近年のビジネス環境は複雑化し、目まぐるしく変化しています。そうした変化のなかで企業が成長を遂げるには、多様化する消費者ニーズを把握し、多角的な視点でビジネスを推進することが求められます。
しかし、これを一つの企業で対応するには限界があるものです。さまざまなステークホルダーと連携して外部の知見や視点、技術を取り入れることで、より柔軟な対応が可能になり、新たな価値の創出につながります。これは、共創による製品開発が企業単独での製品開発より効果的な理由のひとつでしょう。
共創とオープンイノベーションは、両者とも「外部の知識や技術を活用する点」では共通しています。
オープンイノベーションは、「自社に足りない」外部の知識や技術、アイデアを取り入れることに重点をおいているのが特徴です。外部の経営資源と社内の経営資源を戦略的に組み合わせることで、新たなイノベーションを生み出すことを指します。
共創は「企業の垣根を超えて」対等なパートナーシップを通じ、全ての参加者が共同で新しい価値を創造する活動の全般を指す言葉です。オープンイノベーションより広義の概念で、オープンイノベーションは共創の手段の一つとされています。
オープンイノベーションについて詳しくは以下のコラムをご覧ください。
オープンイノベーションとは?メリットや成功へと導くカギを解説
共創には大きく3つのタイプがあります。いずれも企業規模や立場の違い、上下関係などを排除した対等な立場で、それぞれが当事者として積極的に関わっていくことが重要です。
企業と消費者がコミュニケーションを取り、関係を構築しながら商品やサービスの開発などを行う「双方向タイプ」。従来は企業が消費者に対して一方通行で商品やサービスを提供してきましたが、双方向タイプの共創では企業と消費者がフラットな立場で協議することが特徴です。
企業は消費者の意見やフィードバックを積極的に取り入れることで、顧客ニーズを反映しながら共に課題解決に向け取り組むことが可能です。これにより、顧客満足度の向上や顧客ロイヤルティの強化も期待できます。
SNSやライブコマースなどの普及により、消費者とのコミュニケーションも取りやすく、フィードバックも受け取りやすい環境が整っている現代では、双方向タイプの共創を実現しやすくしています。
異なるステークホルダーが対等な立場で協力し、新しい価値を創造する「提携タイプ」。知識や技術、人材、販売網、マーケティングなど各企業が持つ強みを活かし、単独では不足している資源を補うことで、より高い価値の創出につなげます。また、各企業の特色を取り入れることで、新しい市場や顧客層へのアプローチも望めるでしょう。
ボディケアグッズやスキンケア用品、アパレル用品など、衣食住に関わるさまざまな商品を製造・販売する「ファイテンショップ イオンモール鶴見緑地店」では、ライバーと提携し、ライブ配信を通じた共創を実施。顧客視点での新たな価値提供をしています。
ファイテンショップ イオンモール鶴見緑地店へのインタビューはこちら
共通のテーマや目的を持った企業や団体が参加し、課題解決に向けて議論を深めるのが「共有タイプ」の特徴です。テーマや目的を共有し、それぞれの視点からアイデアや意見を出し合うことで、新たな価値の創造につなげます。
共有タイプでは、コンソーシアムやコミュニティといったオープンな関係を構築し、受動的にならず、全員が能動的に役割を果たしていくことが大切です。
多様なバックグラウンドを持つステークホルダーが集まることで、市場のニーズを敏感にキャッチし、ニーズに合った革新的な製品やサービスの創出につながります。また、既存の課題に対する新しいアプローチも生まれやすくなるでしょう。
これにより、新たな顧客層やファンの獲得が期待でき、売上アップへの貢献、顧客満足度の向上やリピーター獲得も期待できます。
共創により、従来の“企業とお客様”“売り手と買い手”“作る側と使う側”などではなく、“同じ目的を持って価値を創出するチーム”というフラットな関係性の構築が可能です。消費者は自由に意見を出し、企業はその意見を参考に商品開発や既存サービスのリニューアルなどを実施できます。
消費者はよりフィットした商品やサービスを得られ、企業には売上アップやブランドイメージ向上といったメリットが得られるでしょう。積極的なコミュニケーションにもつながり、深い信頼関係や継続的な関係構築も期待できます。
ステークホルダーがそれぞれの強みを持ち寄ることで、自社だけでは不足している人的リソースや能力・技術を補うことができます。
また、既にある資源を活用するためゼロベースでの構築が不要となり、コストや時間の削減につながることも。より効率よく、効果的なプロジェクトの実現を目指せます。
パートナーと連携し、それぞれが持つ資源を組み合わせることで、相乗効果(シナジー効果)が生まれることもメリットです。
例えば販売に関してなら、多様なパートナーが協力することで、新規市場の開拓や新しい顧客層へのアプローチが可能になり、売上や市場シェアの拡大が期待できます。パートナーの信頼性やブランド力を活用することで、自社のブランドイメージ向上や信頼獲得にもつながるでしょう。
生産の現場においては、必要な設備や技術、情報などを共有することで、生産プロセスやリソースの最適化を図ることが可能です。生産拠点や倉庫、営業所を共有すれば、物流費用を抑えながら稼働率を向上することもでき、共同で仕入れを行うことで仕入れ量が増えれば、材料費を抑えやすくなります。
共創を通じて、人材の学びと成長の機会が得られることもメリットです。他の企業や団体などと連携することで、これまで自社になかったノウハウが得られ、能力向上を図ることができます。
また、共創によるプロジェクトを通じて、オープンかつ協力的な組織文化が作られることで、組織の活性化も期待できます。社員同士のコミュニケーションが活発になったり、外部の人と接することで刺激になったりと、社員のモチベーションアップにもつながります。
共創によって新たな視点や技術が得られることで、ビジネスアイデアが生まれ、新規事業の創出につなげることができます。自社のみでは不足しがちなリソースや技術も得られるため、いざ新規事業をスタートした際にも、スムーズに進めやすくなるでしょう。
たくさんのメリットがある一方で、共創をする上での課題もあります。課題とメリットを理解したうえで取り組むことが大切です。
多様なバックグラウンドを持つステークホルダーが集うため、誤解や認識の違いが生じることがあります。国際的なパートナーシップの場合は、文化や言語の違いがコミュニケーションの障壁になる可能性も。また、情報共有が不足するとスムーズな進行の妨げになります。
ビデオ会議やチャットツール、プロジェクト管理ソフトなどを利用し、密にコミュニケーションを取り、伝えるべき情報をきちんと伝えることが大切です。定期的に進捗状況や課題を共有し、プロジェクトが円滑に進められるよう努めましょう。
共創に取り組む上で、きちんとルールを定めておくことも重要です。ルールが曖昧だとトラブルに発展したり、プロジェクトが頓挫してしまったりなど、デメリットが生じる可能性があります。特に、収益に関してはトラブルを招きやすい事項です。無償で協力してくれる場合をのぞいて、平等な条件で配分する必要があります。
また、ステークホルダーと情報を共有するため、どうしても情報漏洩のリスクは高まります。信頼できる相手とパートナーシップを結ぶことはもちろん、必要以上に情報を渡さないという意識づけや、厳格な機密保持契約(NDA)を締結することも大切です。
ステークホルダーが同じ市場で競合している場合、市場シェアの争奪が起こることも。特に、共創の結果として誕生した製品やサービスがステークホルダーの既存製品・サービスと競合する場合は、内部競争が発生する可能性があります。また、共創によって開発された技術や製品の知的財産権、特許や商法の帰属を巡って競争に発展するケースも考えられるでしょう。
プロジェクト開始前に市場セグメントを明確にし、直接競合を避ける、新製品と既存製品が競合しないよう調整することが必要です。知的財産権の帰属や使用権についても話し合っておき、双方が納得の上で契約を締結することが求められます。
共創を成功させるためには、時に自社の組織文化や体制を見直し、変革を行うことも必要です。情報共有や新しいアイデアへの取り組み、外部との協力に対して消極的な組織文化の場合、共創の妨げになることも考えられます。情報共有のプロセスや協力体制を明確にし、オープンな組織文化を作り上げることが大切です。
また、プロジェクトを進行するなかで、失敗したり、計画通りに進まないことも十分に考えられます。新しいアイデアや実験を評価し、失敗も学びと捉えられる柔軟な組織環境を作ることも成功のポイントと言えるでしょう。
ステークホルダーからさまざまなアイデアが提案されますが、その分アイデアに対する評価や選別が難しくなります。自社のアイデアが相手に刺さらない場合も、反対に相手のアイデアを受け入れ難いと感じる状況もあるでしょう。
トラブルを避けるためには、全員が納得できる、明確かつ公平な評価基準を定めておくことが大切。また、アイデアの実現が可能かどうか、専門的な視点を持って調査・検討することも必要です。
共創を実現するためには、大きく3つのステップがあります。これらのステップは一過性でなく、必要に応じて行き来しながらプロジェクトを成長させていくことがポイントです。
共創によって達成したいビジョンを明確にし、具体的な目標を設定します。
自社が共創プロジェクトの主体となる場合と、既存の共創に参加する、大きく2つの方法があります。自社でプロジェクトを立ち上げる場合は、ステークホルダーを探すことが必要です。技術力や企業文化の適合性などを考慮の上、選定基準を設定し、選定したステークホルダーとの関係を構築します。
共創では、各パートナーが同じ目標・ゴールを目指すことが前提です。認識のズレがないように目的や実現したい未来について話し合っておきましょう。
目標に沿ってアイデアを創出し、小さな実験を繰り返しながらプロジェクトを進めていきます。プロトタイピングと効果測定を重ね、必要に応じてパートナーを増やしていきましょう。いきなり大きな予算を動かすよりも、小さな実験を繰り返すことでリスクを回避できます。
実験・検証から良好な結果を得られたら、いよいよ実装に向けてのステップへ。地域や社会などフィールドを広げ、実証実験やデータを収集します。定期的にプロジェクトの進捗や効果をモニタリングし、必要に応じて調整しましょう。
プロジェクトの成果を評価し、評価をもとにフィードバックを反映。良かった点や改善点を分析し、全体で共有します。
共創には新たなファン獲得や顧客満足度の向上、リソースの補完やコスト削減など多くのメリットがあり、企業の成長を支えるカギとなります。共創の成功には、透明性や公平性、パートナー間でのコミュニケーション、法的遵守などが大切な要素です。「共創」を取り入れ、ビジネスチャンスの拡大につなげてみてはいかがでしょうか。
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