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顧客との関係を長く継続させていくために必要な要素は何でしょうか?
例えば、新しい顧客を獲得するために新商品を開発したり、様々なキャンペーンやサービスを展開したりするのは、顧客数を増やしていくために重要なことです。しかしどれだけ「時間とコスト」をかけて顧客を獲得しても、1回限りの購入、1回限りのお取引では長いお付き合いに発展せず、また次の顧客を獲得しなければいけなくなってしまいます。
そこで今回注目したいのが、「LTV(ライフタイムバリュー)」。日本語では「顧客生涯価値」と訳されます。この「顧客生涯価値」とは、顧客が特定の企業やブランドと取引を始めてから終わりまでの期間内にどれだけの利益をもたらすのか、という意味。このLTVを向上させる指標として重要になってくるのが『顧客と継続的に信頼関係を築いていくこと』です。
今回お話を伺ったのは、「株式会社わかさ生活」で既存のお客様のマーケティングを担当する南 委久美さんと成相 加菜子さん。お二人からお客様との長いお付き合いのヒントを聞くことができたので、皆様に紹介したいと思います。
顧客と長いお付き合いをするために信頼関係を築きたいと思っている方、ファンづくりをどのように行っていけばいいのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
1998年に創業した「株式会社わかさ生活」は、サプリメントの通信販売会社です。わかさ生活オリジナルキャラクター「ブルブルくん」が描かれた「ブルーベリーアイ」という目の健康に特化したサプリメントのCMを、一度は見たことがある人も多いのではないでしょうか?
わかさ生活のような通信販売会社では、お客様と直接顔を合わせての対面接客ではなく、お電話やオンラインという方法で、全国のお客様へサービスを提供するのが主流です。わかさ生活では、非対面だからこそお客様が感じている疑問やお悩みに寄り添った対応が出来るように、と心がけているそう。
特にわかさ生活では、頂いたご意見やお悩みを『お客様の声は会社の財産』と考えています。例えば、先ほど紹介した人気自社製品「ブルーベリーアイ」は愛用歴が10年、20年の方も多くいらっしゃるそうです。頂いたお客様の声やご要望を分析し、発売以降24年の間に行った改良回数はなんと20回。さらに現在進行形で既存製品を改良し続けています。
これだけ長くリピートされているのは、「ブルーベリーアイ」が『良い商品である』というだけではなく、わかさ生活がお客様の期待に答え続けている結果だと言えるでしょう。また、商品を開発・改良するだけではなく、情報発信やお客様とのコミュニケーションも積極的に取ろうとしています。その取り組みのひとつがライブ配信の活用です。今回はこのライブ配信に着目します。
お客様とリアルな対面の機会を持たない、非対面型のサービスを展開するわかさ生活は、ライブ配信を活用してどのようにお客様とコミュニケーションを行っているのでしょうか。始めに考えたいこととして、通販業界・非対面型サービスの課題があります。
ひとつは、お客様との関係性の構築です。ここで少しイメージしてみてください。よく買い物をするお店、長く通っているお店はありますか?さらになぜ長く通っているのかを考えてみてください。改めて考えた時、そのお店に通っている理由はただ利便性がいいから、たまたま生活の範囲内にあるから、という理由だけではないはずです。
良く買い物をする店や行きつけのお店で商品を購入すると、単に『商品の価値』だけではなく、『よく知る店員さんがいるから買う』、『この店員さんから買う』という安心と信頼を感じられます。これは消費者と販売者の関係性がしっかりとできているということです。
非対面型のサービスを展開する企業やお店は、お客様と直接顔を合わせているわけではないので、『このお店(会社)の〇〇さん』という認識を持ってもらうことが難しいかもしれません。そのため対面型のサービスと同じような関係性を築くことは難しいという面があります。
さらに関係性だけではなく『継続して購入してもらう仕組み』にも課題があるように思います。通販業界に限った事ではないかもしれませんが、売り上げを最大化するために、新規顧客や見込み客向けの様々なキャンペーンを行いがちです。新規顧客に向けた施策は『コストと時間』をかければある程度の成果を見込めるケースが多いですが、継続的な購入・既存顧客の定着に効果的かと言われれば疑問が残ります。
長くご愛顧頂いている既存のお客様からすると、打ち出すキャンペーンが『初回限定○○%OFF』、『期間限定!新規購入の場合もう一個プレゼント!』など新規顧客獲得のためのプロモーションばかりならば不満に思うこともあるかもしれません。新規顧客にばかり偏ってしまうと、商品や企業への不信感につながり、継続購入を迷う、解約に繋がってしまうこともあり得ます。
このような状況では、いくら単価を下げたり、利便性を上げたとしても継続に繋がらない可能性があります。集客が見込めなければ企業や組織としての成長も難しいでしょう。
しかし、今回お話を伺ったわかさ生活は、非対面型サービスを提供する通販会社ではあるものの、「お客様との関係性」「継続して購入してもらう仕組み」を上手く解決し、お客様との信頼関係を構築しています。では実際にわかさ生活の取り組みを見ていきましょう。
わかさ生活は、新たなアプローチとして、電話やECサイトの他にお客様がどこにいても情報を得ることができ、気軽に購入できる仕組みを作りたい、という思いからライブ配信をスタートさせました。
しかし、ライブ配信を始めたからといってすぐにお客様が来てくれるわけではありません。そのため、まずは『ファンづくり』や『コアなお客様が来やすい環境づくり』に力を入れました。お客様にどんな情報・コンテンツがヒットするのか手探りの状態だったため、様々なコンテンツを展開しスタートさせたのが「LIVE わかさニュース」です。この「LIVE わかさニュース」のライブ配信企画には、こだわりが2つあります。
わかさ生活が実施しているライブ配信「LIVE わかさニュース」は、商品を説明して販売することが第一の目標ではなく、健康に関する情報や商品開発の裏話、視覚機能を高めるトレーニングなど、わかさ生活独自の視点から、見る人に役立つ情報を発信して、お客様と交流することを目的としています。
『ホットでリアルな商品の話題や健康情報を提供していく』ことで、『いろんな角度からわかさ生活を知ってもらい、お客様との接点を作ること』が重要な目標。だからこそライブ配信の企画名を「LIVE わかさショッピング」ではなく「LIVE わかさニュース」にしています。
商品を魅力的に、かつ視聴者と上手にコミュニケーションを取るだけであれば、プロのライバーや人気のインフルエンサーを使うという手もあります。しかしこのライブ配信の一番の目的は、わかさ生活を知ってもらうこと。ライブ配信を通じてお客様とわかさ生活(社員)の繋がりを築き、ファン作りを行うため、『出演者全員が社員』ということにこだわっています。
「LIVE わかさニュース」は企画内容の作成も社員で行っています。ライブ配信を行うにあたって、まずは全部署から素案を出し合います。例えば、お客様からのお電話を受けるカスタマーセンターの社員は、カスタマーサクセスの経験やお客様の声を活かした「わかさオンライン講座」やビジョントレーニングを一緒に行う「メノコトLIVE」。
SNSなどリアルタイムな情報発信を行う部署は、「とれたてリサーチ」といった情報発信、書籍部門は「マンガ講座」。他に「ラジオ」連動企画などもあったりします。ライブコマース担当社員だけが取り組むのではなく、様々な部門が「お客様との信頼関係」「コアなファンづくり」のために一丸となって取り組んでいます。
わかさ生活では、もともと全国のお客様と社員が交流できる場として、リアルイベントの開催を定期的に実施していましたが、コロナの影響で開催が難しくなり中断していました。しかしお客様から「また再開してほしい」「会う機会が無くなって寂しい」という声もあったためオンラインでの交流として、ライブ配信を活用しました。オンラインでの交流という時代に合った形でお客様との接点を再開させようと取り組みを始めたそうです。
お客様との繋がり・良好な関係づくりを重要視する理由としては、わかさ生活を創業者の『自分がいいと思ったものしかお客様に売らない』、『自分が安心して飲める商品だけをお客様に届けたい』という想いがあります。
お話しを伺った南さん・成相さんも、お客様に提供するにあたり『毎日飲むものだからこそ、知らない誰かから買うのではなく信頼する人から買う、安心して続けられるような商品になるように、お客様との繋がりを作っていきたい』とお話されています。
企業にとってお客様との関係は1:n(複数)になりがちですが、お客様にとっては1:1の関係です。時代に合わせたライブ配信というツールを通して、自分のことを理解しようとしてくれる・自分に合わせた提案をしてくれる、といった体験を提供することは、お客様に寄り添った対応であると言えるでしょう。
今後リアルな交流の場が再開できたとしても、ライブ配信を活用した交流は維持していくと話されます。その理由として南さんは、『わかさ生活は全国にお客様がいるため、オンラインとオフライン(リアル)両方の機会でお客様と接していきたい。コミュニケーションを取れる場所を作りたいです』と語ります。
既存のお客様だけではなく、新規のお客様にもわかさ生活を知ってもらうためにはまだまだ課題はあるとも伺いましたが、わかさ生活の商品をお客様が安心して継続出来ている背景には、こういったお客様との交流や絆を大事にしている姿勢があるように思います。
わかさ生活では、ライブ配信以外にもお客様に寄り添った対応の実践に取り組んでいます。その取り組みから、お客様との繋がりを深めるポイントが伺えましたので、4つに分けて紹介します。
1つ目は、社員全員が同じ目標、認識を持つこと。わかさ生活では注文以外の「商品の感想」・「お礼」・「質問」などのはがきが、月に多いときは1000枚超届くそうです。なんとそのすべてのはがきに返事をしているとのこと。全社員で返事を書いているのですが、その理由としてはどの部署にいてもお客様の声を知る機会があるからだそうです。
お客様と直接かかわる部署でなくても、お手紙と言う『生のお客様の声』から、お客様が何を求めているのか、何にお困りなのか、どんな感想を持っていらっしゃるのか、ということを知る体験となる他、データを分析して今後に役立てたり、資料として蓄積すればしたりすれば、カスタマーサービスや商品の改善に反映もできるでしょう。
お客様は『返事をくれた〇〇さんがいるから、次もわかさ生活で商品を買おうかな』、と日頃から意識してくれる有効的な手段となりうるのです。
はがきの返事以外にも、わかさ生活では社員が商品をレビューしたり、日頃の情報をブログで発信しています。常にお客様との関係性を築くために、全員で取り組む姿勢を非常に重要視しています。色々な情報発信の場から生まれるお客様の声に、全員が耳を傾けられる環境があるからこそ、全社員がお客様の声を知る機会を得られます。
常にこの部署の担当だからと線引きするのではなく、社員全員でお客様の声をキャッチアップできる環境は、お客様にとっても意見が伝わりやすく、信頼出来る商品づくりに欠かせない環境になっているのではないでしょうか。
上記の他、週に1回お客様からの声を集めて、すぐに改善すべきものをキャッチアップ・実施する会議を行っているそうです。すぐに改善できるもの・すぐに改良すべきものへは即座に取り組む、というのは中々できるものではありません。担当業務に追われていると、取り組みたくても手が回らないということもあるでしょう。
しかし、『今』お客様が不便に感じていること、改善してほしいと思っていることを把握し、『誰がどのように改善すればいち早くお客様の声に応えられるか』を大事にしています。出来ないのではなく『出来るためにどうするべきか』を考えるからこそ、スピード感をもって改善できるのかもしれません。
4つ目は、自分がやるという主体性を持つことです。自分には関係ないからというのではなく、ここは自分がやりますよと常に当事者意識をもって取り組むことが出来れば、主体的に動くことが出来るでしょう。
全員が同じベクトルを持つということにも繋がってきますが、企業は社員の人数が多くなればなるほど全員が同じ意識を持つことは容易ではありません。だからこそ、日頃から全社員がお客様と向き合う機会、時間を作ることで「自分には何が出来るか」「こうしたらもっと早く取り組めるのではないか」と意識を持つことが大切です。
わかさ生活が取り組むライブ配信や、お客様に寄り添う姿勢を通して、非対面型サービスであってもお客様との関係性を築く機会やチャンスは作ることができると分かります。お客様に長くお付き合いを継続していただけることは、企業にとって非常にプラスになります。LTVを高めたいと思っている企業、顧客と長く継続できる関係を築きたいと思っている方はぜひわかさ生活の取り組みを参考にしてみるとよいかもしれません。
今回、わかさ生活にお話を伺った中で、ライブ配信や社員の取り組みによってお客様が安心できる「関係性」や「継続できる仕組み」が作られていることが分かりました。お客様としっかりとした関係性や絆ができることは、LTV(ライフタイムバリュー)、「顧客生涯価値」に大きく関係してくるのではないかと思います。
ぜひファンづくり、お客様との長い継続した関係を作っていく際は、1:n(複数)の関係性ではなく、1:1の関係性をつくり、どうしたらお客様に満足していただけるかということを考えて取り組んでいくといいかもしれません。
わかさ生活で行っているライブ配信についてもっと詳しく知りたい方はこちら:https://www.wakasa.jp/np/wakasa_live/
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